凍結保存

※当記事はサークラアドベントカレンダーのために執筆されています

adventar.org

 

 

自分語りをすることよりも、それを聞くことのほうが好きです。聞いて、自分との共通点や違いを考えるのが僕は好きだし、様々な形の自分語り(例会、会誌、このアドベントカレンダーの記事自体、など)に接することが出来るのが、ここサークルクラッシュ同好会にいるメリットだと思っています。思ったっきりで別にその感想を長々と語ることはほとんど無く、5*140字を超えることはまれなのですが、何を考えているのか分からないと言われるのが最近つらくなってきました。今回は記事の形にしてみようと思います。

こじらせという言葉を、思考を重ねすぎて自分自身ですら理解しがたくなってしまった状態、異常な思考回路にたどり着いてしまった状態、という意味で僕は解釈しています。遠くへたどり着けるのは素敵な能力だと思います。


自分をモテない男、恋愛経験の少ない男と称して悩みを語る人は多くいて、彼らはよく、そもそも好きな相手がいないということに思い当たります。確固たる理想像があってそれに合う人が見当たらないから好きな相手がいない、ということではなく、割と誰でも良い、自分を好きになってくれる人がいたら好きになる、という発言を多く見ます。
僕も恋愛の能力がかなり低いタイプですが、しかしこれは共感できたことがありませんでした。好きな相手がいないという時期はほぼ無いと言ってよいです。常に誰か一人を好きな人間として設定していました。自分は内向的ですぐに閉じてしまう人間なんだ、油断していたらすぐに何もしなくなってしまう、好きな相手という設定に従って、好意があったら何もせずにはいられないはずなのだから行動せよ、と、自分を煽って過ごしていました。恋愛の能力が無いので大した行動はできませんでした。高校のころのAさんとは、登下校や授業の合間などの時間で接点を増やしたり、部活に複数所属しその一部を彼女と重複させたりしました。単に会話をするだけでしたが、Aさん以外と話さなさすぎて異常なコミュニケーションだったと思います。Aさんも異常なコミュニケーションをしてくる人で、よくシャープペンシルで指を刺されたり、名前をわざと忘れられたりしました。会って数週間で告白したのも異常だし、その時は翌日はいかに酷い言葉で振ればよいか友人と考えてきたと喜々として教えてくれました。数年前はBさんに憧れていました。面と向かって話すことを嫌われていて、顔を隠して話したり、目を逸らして話したりしていました。大学や勉強に関する、若干暗くてネガティブな話をし続けて、夜を明かすこともありました。ツイッターでの空中リプライだけで会話するのも楽しくて、鍵アカウントまで作ってしまいました。これは関係の無い話ですが、僕とBさんが親しげに話していると思い込んで、Bさんを慕う別の人が諦めてしまった、という出来事があったようです。人間関係のさなかに自分がある実感をくれる、好きなエピソードです。Cさんはいわゆるメンヘラっぽい人で、苦しい感情やそれに伴う異常な行動について語ってくれるところが好きでした。ただその苦しみとセットで、それをいつも特定の男性に救ってもらっていて申し訳ない、ということも語っていて、それが非常につらくありました。Dさんは憧れてくれていていいよと言うので好き勝手に好んでいました。好んで良いというのが保証されているのは存外楽でした。別に向こうから好かれる必要も感じないため、嫉妬も感じずに済みました。時間の経過とともに、話す回数や会う回数が減少して、興味が薄れました。好んでいるという設定だけがあっても、どこにも進んでいる感覚がありませんでした。Eさんのことは初めから友人として好むということにして、これはかなり良い相手との良い関係性だと思っていますが、進展の可能性が友人から親友まで程度の幅しか無いということを常に意識してしまいます。現在の人は省略します。


進展に対して気持ちが盛り上がるのが速すぎるのです。どの時点での好意や嫉妬、その時々の気持ちについても、もう終わったことであっても、鮮明に思い返すことができ、全く減衰せず凍結保存されている感覚があります。覚えているというだけで、再びそのような感情になることを避けています。何も起こっていなくても、凍結保存された感覚を思い出してしまい、それを感じないようにする、ということを繰り返して、何も起こっていません。
交際していく中で気持ちが変化していく、というような感覚が、まだ分かっていないのだと思います。進展が無いときの楽しい思い出はたくさん挙げられるし、どれも良い経験だったとは思うけど、進展した先にたどり着けていないし、想像もできていない。進展した後の気持ちこそがより本質的なものであり、それに比べたら自分の今までの体験や、保存されている気持ちには何の意味があったのか、と考えてしまいます。年齢に対して積み重ねた経験が薄すぎてつらくなってきた。

 

僕からは以上です。17日目の担当は、まくはりうづきさんです。お楽しみに。